この記事には広告を含む場合があります。
記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。
「なぜ、ジャパネットたかたでは商品がこんなに売れるんですか?」
何度もこの質問を受けるうちに、髙田明さんはひとつのことに気づきました。
「私たちが商品の本当の魅力を、お客さまに『伝える』ことだけではなく、その魅力が『伝わる』ことを本気で考えていた、ということでした」
37歳で父親のカメラ店の佐世保支店から独立した髙田さんは、大きな会社を作ろうという目標も、日本一の販売会社を目指すという夢も、持ったことが一度もなかったといいます。ただ毎日、その日しなければならないことを「自分の力の300%を注ぎ込んで走り続けてきた」——その先に、年商2億7000万円の小さなカメラ店が、売上1500億円を超えるジャパネットたかたになっていました。
本書『伝えることから始めよう』は、2016年のテレビショッピング引退を機に、30年間の経験とエッセンスをまとめた、髙田さんの最初で最後の著書です。
髙田明の経営思想の核心は「伝えたつもりでなく、伝わったかを問い続けること」。
その一点の問いが、どこにでも売っているナショナルブランド商品を、他の誰にも真似できない方法で届け続けた。
目次 表示
- 髙田明さんはどのような人物か(基本プロフィール)
- 「伝える」と「伝わる」は違う——なぜ同じ商品でもジャパネットだけ売れるのか
- 「今を生きる」——なぜ目標もビジョンも持たない経営者が1500億円企業を作れたのか
- 「ボトルネックを探し続ける」——なぜ現場に立つことが問題解決の唯一の方法なのか
- 「金利・手数料ジャパネット負担」——なぜ自分の失敗経験がサービスの原点になったのか
- 「逆境でも攻め続ける」——個人情報漏洩事件からなぜV字回復できたのか
- 髙田明さんのこだわりとは?
- 髙田明さんゆかりの地とは?
- 髙田明さんから学ぶ、3つの教訓とは?
- この記事で語りきれなかった『伝えることから始めよう』の魅力とは?
- まとめ|髙田明さんが教えてくれること
- よくある質問
- 関連記事
髙田明さんはどのような人物か(基本プロフィール)
| 氏名 | 髙田明(たかだ あきら) |
| 生年 | 1949年、長崎県佐世保市生まれ |
| 学歴 | 大阪経済大学経済学部卒業 |
| 経歴 | 大学卒業後、父が経営するカメラ店に入社→1986年37歳で佐世保支店から独立→ラジオショッピング開始(1990年)→1994年テレビショッピング開始→売上1500億円超に成長→2015年社長退任→2016年1月テレビショッピング引退 |
| 主な実績 | ジャパネットたかた売上1500億円突破。「金利・手数料ジャパネット負担」を定着させる。デジカメ+プリンターセット販売で累計100万台。2005年の個人情報漏洩事件からV字回復。2013年度に過去最高益を達成し退任宣言を撤回 |
| 著書 | 『伝えることから始めよう』(東洋経済新報社) |
「伝える」と「伝わる」は違う——なぜ同じ商品でもジャパネットだけ売れるのか
本書『伝えることから始めよう』が最初に問うのは、この根本的な違いです。
「『伝えたつもり』で終わってしまったら、商品を買っていただくことはできない。それが、ラジオ・テレビショッピングを通して、私が一番学んだことでした」
ジャパネットたかたが扱ってきたのは、特別な商品ではありません。ソニー、シャープ、キヤノン——どこの量販店にでも置いているナショナルブランドの商品ばかりです。それでも売れた。その理由が「伝わる」という一点にある、と髙田さんは言います。
商品には多くの側面があります。安さ、デザイン、性能、軽さ、使いやすさ——すべてを伝えようとすると何も伝わらない。「何を伝えたいのかを明確に意識すること」がまず大切で、次に「その商品がどんな人の、どんな生活シーンで使われると輝くのか」を具体的に想像することが必要です。
高級電波時計を紹介するとき、スタッフが「性能と機能から紹介したい」と提案しました。しかし髙田さんは反対します。「女性が高級ブランドのバッグを買うとき、機能の説明を最初に聞きますか? まずデザインを見るでしょう」——サファイアガラスの輝き、メイドインジャパンの奥行きから紹介し、機能は最後に持っていった結果、予想を上回る注文が殺到しました。
「今を生きる」——なぜ目標もビジョンも持たない経営者が1500億円企業を作れたのか
本書『伝えることから始めよう』を貫く哲学が「今を生きる」です。
「大きな会社を作ろうとか、日本一の販売会社を作ろうとか、そんな夢を抱いたり目標を持ったりしたことは、一度もない。毎日毎日、その日しなければならないこと、その日できることを、一生懸命、自分の力の300%を注ぎ込んで走り続けてきた」
この哲学の原点は、父のカメラ店を手伝っていた10代のころにあります。平戸の旅館で観光客の写真を撮り、翌朝売りに回る。毎晩2〜3時間の睡眠で働き続ける中で、自分なりに工夫を重ねました。2人組を一緒に撮れば2枚売れる。集合写真を撮れば7〜8割が買ってくれる。プリントをお皿に焼けばさらに高く売れる——「目の前のことを一生懸命にやっていれば、自然と次の課題が見えてくる」という確信が育まれました。
「次に何をすればいいか見えないということは、まだ一生懸命じゃないのかもしれない」——この言葉が、髙田さんの経営観の核心です。
「ボトルネックを探し続ける」——なぜ現場に立つことが問題解決の唯一の方法なのか
本書『伝えることから始めよう』で髙田さんが引用するのが、エリヤフ・ゴールドラットの「TOC(制約理論)」です。
「物事はとてもシンプルで、いくら複雑に見えていても、すべての問題は本質的な原因(ボトルネック)を探し出して、そこさえ解決すれば全体の問題も解決する」——これを読んだとき、「自分がやってきたことはそういうことだったと思いました」と髙田さんは書いています。
ラーメン屋の例が本書に登場します。最初のボトルネックは「味」。次は「接客」。次は「雰囲気」——一つ解決するたびに次のボトルネックが見えてくる。「今を一生懸命に生きていないと、ボトルネックは見えてこない」
髙田さんがカメラ店時代に気づいたのも同じです。なぜ売上が上がらないのか、なぜフィルムが集まらないのか——机の上で考えるのではなく、現場に立って働きながら考える。その積み重ねが、ラジオショッピング開始前の年商2億7000万円を、3年後の1994年に43億円(16倍)に引き上げました。
「金利・手数料ジャパネット負担」——なぜ自分の失敗経験がサービスの原点になったのか
本書『伝えることから始めよう』の中で、最もよく知られたサービスの誕生エピソードが語られます。
子どもの運動会を撮りたくて、50万円のビデオカメラを分割払いで購入した髙田さん。金利だけで十数万円——「馬鹿馬鹿しいなと思いました。結局3回ぐらいしか使えませんでしたから」
ラジオショッピングで高額商品を扱い始めたとき、この体験を思い出します。「欲しいけれど一括払いでは手が届かない。でも金利を払うことには抵抗があって、購入を諦めている人がいるのではないか」——そこで「金利・手数料ジャパネット負担」のサービスが生まれました。
後にテレビの地デジ化特需のとき、金利負担は年50億円を超えます。それでも「必要経費だと自然と考えるようになっていた」と髙田さんは言います。「お客さまの暮らしを豊かにする商品をなるべく多くの皆さまにお届けしたい」——この想いから始めたサービスが、ジャパネットを象徴するキャッチコピーに育ちました。
セット販売の発想も同じです。「カメラを買ったら、すぐに撮影したいでしょ。でも通販ではついでにフィルムもということはできない」——カメラとフィルムをセットにして送ることで、届いたその日に使える体験を届けようとした。デジカメ+プリンターのセットは累計100万台を販売しています。
「お客さんとの関係を徹底的に大切にし、地道に信頼を積み重ねた」経営者の事例は他にもあります。
「逆境でも攻め続ける」——個人情報漏洩事件からなぜV字回復できたのか
本書『伝えることから始めよう』の後半は、危機のときにこそ「今を生きる」哲学が試された場面として読めます。
2005年、ジャパネットたかたでおよそ51万件の個人情報漏洩事件が発覚します。ラジオ・テレビショッピングを全面休止する「異例の事態」に追い込まれました。
しかし髙田さんの対応は逆説的でした。収益が激減する中で東京オフィスを開設し、投資を増やし、リストラは絶対にしないと決めた。「気持ちが萎えたらおしまいだと思っていました。逆境だからといって守勢に回らず、むしろどんどん前に出て、ジャパネットは動いているというメッセージを発信すべきだ」
さらに2013年度、「目標が達成できなければ退任する」と社内外に公言します。前年比2倍近い過去最高益の更新——この「退任宣言」に社員は震撼します。
「私自身がリーダーシップを発揮すれば当面の危機は乗り越えられたかもしれない。しかし、それでは100年続く企業にはなれない。社員の力で目標が達成できたら、会社は間違いなく変わる」
結果、目標は達成されました。
髙田明さんのこだわりとは?
本書『伝えることから始めよう』を通じて、髙田さんという経営者の核心が見えてきます。
「ナショナルブランドへのこだわり」:ラジオショッピング開始当初から、ソニー・シャープ・キヤノンなどナショナルブランドにこだわり続けました。「なぜどこの店でも売っているものを売るのか」と言われましたが、「アフターケアを考えてのことでした。故障したときにどうすればいいか不安に思うお客さまのために、安心感のあるブランドを選んだ」——信頼性を商品選択の最優先にした姿勢が、通販に慣れていない時代の消費者の不安を解消しました。
「最初の1分間が勝負」:テレビショッピングでは、最初の1分間で「何を伝えたいか」を絞り込むことを徹底しました。「ここもいい、あそこもいい、こっちもそっちもでは、いったい何がいいのかさっぱりわからず、結果、何も伝わらない」——伝えたいことを一点に絞り、最初の1分間で勝負することが「伝わる」コミュニケーションの核心だと言います。
「自分の力の300%」:「私のいいところは、過去のことはすぐに忘れて、目の前にあることに夢中になって全力投球できるところ」と髙田さんは言います。どんな小さな仕事でも、自分の力の300%を注ぎ込む。この習慣が、カメラ店の写真販売から、ラジオショッピング、テレビショッピングまで、ステージが変わるたびに全力で結果を出し続けた原動力です。
髙田明さんゆかりの地とは?
長崎県佐世保市(生誕地・創業の地):ジャパネットたかたの本社を今も置く場所。地方の小さな都市から全国の茶の間に届けるテレビショッピングを作り上げた原点です。「佐世保訛りの甲高い声」と髙田さん自身が笑うトレードマークも、この土地から生まれました。東京進出のときも「本社は佐世保に残す」という姿勢は変わらず、地方発のビジネスモデルを貫きました。
平戸(学びの場所):10代のころ、父のカメラ店を手伝って観光地の宴会写真を撮り続けた場所。「毎晩2〜3時間しか眠れなかった」「1500枚、2000枚の写真を一晩でプリントした」——この体験が「今を全力で生きる」「工夫し続ける」という髙田さんの原点を作りました。「一生懸命に今を生きていると、課題が見えてくる」という哲学はここで生まれています。
東京オフィス(逆境の中の決断):個人情報漏洩事件による3割以上の減収という危機のさなかに開設した拠点。「逆境でも攻め続ける」という哲学を社内外に示した象徴的な決断の場所です。東京進出が社内に競争意識と活気をもたらし、過去最高益達成へとつながっていきます。
髙田明さんから学ぶ、3つの教訓とは?
1. 「伝えるより伝わることを考えろ」——コミュニケーションの本質は受け手にある
「伝えたつもり」と「伝わった」は根本的に違います。どれだけ熱心に語っても、相手の心が動かなければ意味がない。「どんな人が、どんな生活シーンで使うと輝くのか」を想像し、一点に絞って伝える——この発想は商品販売だけでなく、教育・医療・政治・家庭など、あらゆるコミュニケーションに通じます。
2. 「今を一生懸命に生きていれば、ボトルネックが見えてくる」——課題は現場にしか現れない
次の手が見えないのは、まだ本気でないからかもしれない——この逆説が髙田さんの哲学の核心です。机の上で戦略を考える前に、まず現場で全力を尽くす。全力を尽くしたとき初めて、何が問題なのかが見えてくる。ボトルネックを発見できるのは、現場で一生懸命に動いた人だけです。
3. 「逆境こそ攻め続ける」——守りに入ったときが本当の終わりだ
情報漏洩事件で減収が続く中で投資を増やし、リストラをせず、退任宣言という覚悟を示した——この姿勢は「気持ちが萎えたらおしまい」という信念から来ています。逆境のとき、守勢に入って傷口を最小化しようとするのは本能的な反応ですが、組織にとっては「現状肯定」という最悪のメッセージになりかねない。逆境こそ、行動で覚悟を示すときです。
この記事で語りきれなかった『伝えることから始めよう』の魅力とは?
本書にはまだ紹介しきれていないエピソードが多くあります。
一つ目は、「1日で売上100万円を超えた夜の興奮」のエピソードです。カメラ店時代、一軒のお宅を訪問して、最初はミノルタのカメラを1台売るつもりが、ソニーのビデオカメラも、オーディオコンポも、カラオケセットも——気づいたら夜中の12時近くに100万円を超えていた。「あんなに自慢したのは、あれが一番だったでしょうね」という言葉に、髙田さんの仕事への純粋な喜びが溢れています。
二つ目は、「チャレンジデー」という企画の話です。テレビショッピングで一日限りの特別企画を打つことで、視聴者に「今日が勝負」という緊張感を与え、コールセンターに電話が集中する体験を演出しました。「電話が鳴り止まない」状態を作ることが、次の番組への期待感にもつながる。単なる値引きセールではなく、視聴者を巻き込む「体験設計」として機能していました。
三つ目は、「後継者への引き継ぎ」の哲学です。「70歳、80歳になってから、さて誰を後継者にしようか、はてだれもいない、となっては困る」——元気なうちに退くという決断を、自分の欲や名声ではなく「100年続く企業を作るため」という目的に紐付けた。社長退任の1年前から、社員に「なぜジャパネットの番組は伝わるのか」を語り続けた最後の1年が、本書の根幹になっています。
📚 [伝えることから始めよう(東洋経済新報社)を読んでみる]
まとめ|髙田明さんが教えてくれること
「本日は生放送ではありません」——本書はこの一文で始まります。テレビショッピングの語りかけるような文体のまま、30年分の哲学が綴られています。
髙田さんが証明したのは、「特別な商品がなくても、伝わる方法を知っていれば売れる」という事実ではありません。それより深い真実——「目の前の人の生活を豊かにしたいという一点の想いが、すべての工夫の源だ」ということです。
本書『伝えることから始めよう』は、「伝わる」コミュニケーションの技術論でありながら、「今を生きる」という人生哲学の書でもあります。ぜひ手に取ってみてください。
よくある質問
Q: 髙田明さんはなぜテレビショッピングを引退したのですか? A: 「100年続く企業にするためには、元気なうちに後継者に後を託さなければいけない」という信念からです。70〜80歳になってから後継者を探すのでは遅いと考え、2015年に社長を退任、翌2016年1月にテレビショッピングからも引退しました。退任前の1年間を「なぜジャパネットの番組は伝わるのか」を社内に語り継ぐ時間に充てており、本書はその集大成です。
Q: 「伝える」と「伝わる」の違いは何ですか? A: 「伝える」は発信者の行動であり、「伝わる」は受信者の心が動いた状態です。どんなに熱心に伝えても、受け手の心が動かなければ「伝えたつもり」に終わります。髙田さんが重視したのは「お客さまにとって、この商品がどんな場面で輝くのか」を想像し、一点に絞ってその価値を届けること——「伝わる」を起点に逆算した発信の姿勢です。
Q: ジャパネットたかたはなぜ地方の佐世保から全国展開できたのですか? A: ラジオとテレビという「放送」を活用することで、物理的な立地を乗り越えたからです。また「ナショナルブランドへのこだわり」「金利・手数料負担」「セット販売」という顧客の不安と不便を解消するサービス設計が、全国の消費者の信頼を獲得しました。「いまの時代、企業規模を超えて戦える」という中川淳さんの言葉と同じ発想を、髙田さんは放送という手段で1980〜90年代から実践していました。
関連記事
→ 「地道に信頼を積み重ね、凡事徹底で業界をリードした」経営者
→ 「地域を大切にし、理念を核心に据えた経営」を貫いた経営者
→ 経営者たちが経験した逆境と立て直しのパターン
参考文献:髙田明『伝えることから始めよう』(東洋経済新報社)
